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1.5 技術解説

 

1)ミラーサイクル
本研究では、従来と同じシリンダ容積(ボア×ストローク)のエンジンを使用して、2倍以上の出力である出力率390(べースエンジンは187)という超高出力の達成を目標にしている。
エンジンの出力を上昇する場合、より多くの燃料を燃焼させることが必要となる。
この結果として、燃焼最高圧力(Pmax)と燃焼温度が上昇し、機械的負荷および熱的負荷が増大するとともに、NOx量が増加する。
このため、エンジン部品の強度増加や冷却能力向上が必要となり、大きく、かつ、重いエンジンとなる。
また、燃焼最高圧力の低下のために、圧縮比を低下した場合、効率が低下するため、熱負荷の増加、性能の悪化、始動性の低下およびNOx量の増大につながる。
従って、正味平均有効圧力が増加しても燃焼最高圧力の上昇を低く抑え、燃焼室温度や排気温度上昇を抑えることができ、かつ、NOx量を低下させることが可能なミラーサイクルを採用することとした。
ミラーサイクルは、吸気弁を従来のタイミングよりも早く閉じ、シリンダ内に導入された空気を断熱膨張させて、温度および圧力を下げることにより燃焼最高圧力や燃焼温度を低下させ、併せてNOx量を低減する技術である。

 

吸気弁早閉じによるミラーサイクルを概念図により示す。
a)従来のサイクルでは、1、2の吸気行程で、ピストンの下死点付近まで吸気弁は開いており、空気が吸入される。吸気弁早閉じのミラーサイクルの場合は、下死点に達する前に吸気弁を閉じる。
b)これにより、シリンダ内の空気量が一定のまま、体積が膨張(断熱膨張)するため、温度が低下する。
c)この後は、通常の圧縮、燃焼(膨張)、排気行程をとる。

 

 

 

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